クラウドサービス導入のメリット

今回は、クラウドサービスを校務に導入するメリットについてご説明させていただきます。

改定情報セキュリティポリシーガイドラインでは、具体的に以下の6点がメリットとして挙げられています。*1 

1.効率性の向上*2 

教育委員会がサーバを用意するのではなく、クラウドサーバを利用することで初期費用を抑え、ICT 環境への投資可能額が比較的小規模の教育委員会においても、ICTの導入が期待される。
(ただし、クラウドサービスにおいてはシステム稼働に伴う費用(機器設置環境、人件費等)を含めてのサービス価格設定となるため、従来のオンプレミス環境の保守・運用費への影響も踏まえ、長期的な視点でのコスト比較・検討を行うことが必要)

また、多くの場合、クラウド事業者が計画的に用意した物理リソースを仮想化設定することでサービス提供可能であること、多様な基本機能があらかじめ提供されていることなどから、導入時間を短縮することが可能となる。

2.セキュリティ水準の向上*3

一定水準の情報セキュリティ機能をサービスの基本機能として提供しつつ、より高度な情報セキュリティ機能の追加も可能。

また、サーバ等の管理を教育委員会・学校が行うのではなく専門的な知識を有し、かつ最新の情報に基づく情報セキュリティ対策を随時実施するクラウド事業者に一定程度委ねることができるため、より効率的・効果的に情報セキュリティを担保することが可能となる。

ネットワーク分離を必要としない認証によるアクセス制限を前提とした構成
<参考資料 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月)改訂説明資料P6
https://www.mext.go.jp/content/20210528-mxt_jogai02-000011648_001.pdf
(最終閲覧日 2021年11月4日)>

3.技術革新対応力の向上*4 

学校現場において、現場に適したクラウドサービスを選択し、活用することが可能。目的に応じて新しい機能や特長を持ったクラウドサービスを使い分けることも可能で、日進月歩で進化する新しいサービスの取り入れが容易である。*4

現在はGIGAスクール構想に合わせた様々なサービスが各社から打ち出されており、自治体の特色に合わせたサービスの選択も可能。

4. 柔軟性向上*5 

リソースの追加・変更が容易であり、短期間(数か月)の試験運用といったサービス利用に適している。

また、オンプレミス型ネットワークよりも情報システムの導入準備期間が短縮され、途中からのリソース拡張や機能追加が容易であるため、教育委員会・学校では、スモールスタートで利用し、その後の状況に合わせて必要な分の柔軟な拡張が可能。

5.可用性・完全性の効率的確保*6

教育委員会自らがシステムを管理するよりも、より強固な環境下での情報資産の管理を行うクラウドサービスを利用することで、災害による情報の破損・消失のリスクを低減するなど、より効率的に、可用性・完全性を確保することができる。

なお、クラウドサービスにおける可用性や完全性の担保はサービス契約内容や後述する SLA などにより違いがある、そのため実現したい機能や費用などを総合的に検討した上でどのようなサービスを利用するのかを検討する必要がある。

6.保守・運用稼働の削減*7

クラウドサービス利用では、クラウド側の保守・運用をクラウド事業者に一元的に任せることから、オンプレミスと比較して、教育委員会・学校の稼働を削減することができる。

上記のメリットのみを取り出してみると、クラウドサービスを利用することで、自治体様の特色に合った最新のサービスを、強固なセキュリティの元で専門的な知識を持つ業者に委託し、必要な分のサービスのみを受けることができ、災害にも強く、セキュリティやバックアップの手間も減らすことができるという風にも取ることができます。

「じゃあクラウドサービスを導入して業者に全部任せれば、すべてうまくいくんだ!」と思われるかもしれませんが、もちろんそういうわけではありません。クラウドサービスのメリットは上記に挙げられた通りですが、これらのメリットを引き出すためには、どういったサービスが必要かなどを、細かくクラウド事業者とすり合わせる必要があります。

依頼主と業者のやり取りが不足し、「こうなるはずだったのに話が違うじゃないか!」となってしまうのは、どの業界でも聞こえてくる話ですね。

そうならないためには、一つの業者ではなく複数の業者を比較して検討することや、自分たちがどのようなサービスを求めているのかをはっきりと定義すること、情報の取り扱いやどこまでのサービス・管理を行政側の管理責任とするか、データの保管場所は日本の法令が及ぶ場所にあるのかなどをはっきりと決めたうえで、業者を選定することが必要となります。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。次回は上記のような、クラウドサービス導入にあたっての留意点や、クラウドサービス利用にあたっての責任の所在についてより詳しくご説明させていただきます。

<参考文献>

*1 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P115 (最終閲覧日2021年11月4日)

*2 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P115 (最終閲覧日2021年11月4日)

*3 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P115 (最終閲覧日2021年11月4日)

*4 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P116 (最終閲覧日2021年11月4日)

*5 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P116 (最終閲覧日2021年11月4日)

*6 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P116 (最終閲覧日2021年11月4日)

*7 文部科学省 教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和3年5月) P117 (最終閲覧日2021年11月4日)